763-ハンクジョーンズ

 伝説のジャズピアニスト「ハンクジョーンズ」の公演に行ってきた。

 福岡ビルボードライブの一周年記念のスペシャルゲストなのだ。


 ハンクは1918年7月31日ミシガン州ポンティアック生まれなので
なんと90歳の現役ジャズピアニスト。ビ・バップ全盛の頃から21世紀の
今日まで、精力的に活動を続けている名匠。サド・ジョーンズ、エルヴィン・
ジョーンズ3兄弟の長兄で3人とも音楽家としてジャズの歴史に燦然と輝く
存在である。(サド・ジョーンズ(1923~86)エルヴィン・ジョーンズ(192
7~2004)と既に亡くなっている。

 お奨めCDは数え切れないほどあるが、まずはこの2枚。

 Someday My Prince Will Come /Great Jazz Trio
 ラウンド・ミッドナイト/Hank Jones

 さてライブのレポートをしておこう。
 ピアノ・ドラム・ウッドベースのトリオ編成。

 人柄が滲み出るハンクの優しい音色で静かに演奏がはじまる。
ベースとドラムが寄り添うように響き、メロディが澄んでいく。ハンクの
パートが最高潮を終えると、ウッドベースが抑圧された高音と伸びやかな
低音のフレーズが連なる。

 ハイハットの雄叫びの後 立ち上がるドラムソロがはじまった。
 技術に裏うちされた多彩な表現で繰り出されるリズムパターン。

 抑圧と解放。
 そのコントラストに肌が粟立つ。

 名曲が次々に演奏される。
 ハンクと時間を共有している幸せが心に広がる。

 「Speak Low」ハンク以外のアーティストもたくさん演奏している名曲だが
彼の演奏にかなうミュージシャンはいない。

 ライブだと、のっけのメロディで、人は思考することが出来なくなる。
直感のみが体を支配し、ハンクの揺れにあわせてスウィングしてしまう。

 ハングのプレイがまた一段ギヤを上げた。
 オーディエンスが即座に感知し波のように答えた。

 縦横無尽に調子に変化を加えながらリズムが高ぶり最高に達した間のすぐ
あとにほんの一瞬生じた無音のすぐ後、恐ろしく抑制の効いたリフがピアノ
から零れた。

 これが90歳のプレイとはとても思えないほどみずみずしい。

 伝説のピアノマンなどといった感慨や尊敬の念なんて頭から吹っ飛んでし
まった。単純に彼のバイブレーションにやられちまっているのだ。
 
 自然とスタンディングオベーションがおきる。
 今夜この場所に参加した全員がひとつの気持ちになっている。

 音楽にはパワーがある。
 僕は音楽のパワーを信じている。

 ライブの後、記念のCDを2枚購入しサインを貰い2ショットをデジカメ
に収めた。なんという幸運。

 余韻が消えぬままビルボードライブの支配人と夜中まで深酒。
 明日はナイジェリアのアーティスト「ASA」のライブだ。

 

  2008年09月03日   岡崎 太郎