820-お金の使い道

「大金の使い道」は、お金のないときから考えておけ


「お金で買えないモノは何パーセントなのでしょう?」
「お金で買えないコトは何パーセントなのでしょう?」
 
 あなたの比率は何パーセントでしょう。
 
 

僕は、お金で買えないモノは”10パーセント”くらいかなぁと思って
ました。
 
 ちなみに、あるクライアントの社内セミナーで、同じ質問をしたのですが
結果は、約7割が、およそ僕と同じ程度の5%から15%。ところが残りの
人の中には「ほとんど買うことができない」と正反対の意見を持っている人
がいました。

 あなたはこの結果をどう考えますか?

 お金で買えないモノとは具体的には何でしょうか?

 きっと、すぐに頭に浮かぶのは「愛」でしょう。
 ほとんどの方が間髪いれず愛と答えます。

 その他に何があるのでしょう。

 あるエピソードを思い出したので、下記に紹介します。
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 30歳になる直前に、ビジネスで莫大な成功を得た香港の友人が、高級
住宅街で有名なビクトリアピークの中腹に豪邸を建てたというので、
その新築祝いに誘われたことがあります。

 友人に案内されると、さすがに豪邸といわれるだけのことはあり、
天然石を贅沢に配した外壁に、100m2を超えるリビング。庭へ続くタイル
の貼られたテラス。広々としたアイランドキッチン。三階に設置された4人
がゆっくりくつろげるジャグジーとベランダ。

 すが世界的に有名なデザイナーが設計しただけのことはあります。
 でも僕は寂しい部屋だなぁと思って説明を聞いてました。 

 「なんだ?このミスマッチは?」僕は驚きました。
 ワインでもいかが?と用意されたワインは1988年のシャトームートン。
でもグラスは国産ワインのオマケについてくるような安物だったのです。

 もったいない。
 最高のボルドーをこんなグラスでは飲みたくないとまで思い、失礼ながら
大きめのグラスはないかと尋ねると、ワインは頂き物で、ワインについて
まったく知識がないからと恥ずかしそうに答えたのです。

 あらためて室内を見渡すと、壁面には絵はおろか、調度品とよべる小物が
一切ありません。照明器具も新しいのですが、味がないのです。

 彼が念願のオーディオルームを案内してくれるというので、ついて行くと
部屋とバランスの取れない安いビニールのソファーに、数万円のコンポ型の
オーディオが並んでいました。またオーディオを知らない業者が設置したの
でしょうスピーカーの配線がむき出しのままでした。

 僕は言葉を失いました。

 気持ちのよい空間に、いいアルコールといいグラス。そして極上の料理と
魂を揺さぶる音と照明。そして家族や仲間。

 まとめれば「知識」「見識」「哲学」などの育成には、学びと経験。
すべからず時間がかかるのです。

 僕はオーディオが大好きですが、最高の音を最高の空間で楽しむためには
資金よりも、機器のセッティングから音源の選定。

 音楽の歴史や知識を体系的に把握する必要があり、最低でも10年は
かかります。ワインも芸術同様で、あるレベル以上で「楽しむため」には、
時間をかけたナレッジの蓄積が重要といえます。

 考えて見れば、これほどの大きな家であれば、毎週パーティでもしなけれ
ば勿体ない。 

 パーティーを開くにはゲストをもてなすスキルと経験が必要になります。
なにせホストとゲストは一対多の関係ですから、たとえば絵や音楽や詩集に
写真集。スコッチやワインセラーに収まる多くのワインにグラス、
デザイナーものの家具など多くの脇役によって、ゲストがある程度勝手に
楽しむ口実を工夫する必要があるのです。

 何をセレクションするのか、そういったハイセンスな目利き、演劇や絵画
に骨董など楽しむ芸術的なセンスを育てる意志と期間が必要になります。

 こうしたセンスは若いうちから少しずつ培っていかないと身につかない
ものですから、莫大なお金がいくらあっても、心が貧乏であれば、そのうち
幸せは離れていってしまうもの。

 お金で手に入る「モノ」や「コト」と、お金では手に入らない「モノ」や
「コト」とのバランスをとることを学ぶのです。

 ポイントは、お金がないときから「学び」をスタートすることです。
そうすれば、お金とセンスがバランスされますからね。

 21世紀になってこの約10年、いろいろな意味であらゆるコトの
スピードが早くなっているなぁと実感してます。

 大金を稼ぐのはあっという間。その稼いだお金を使うのも一瞬です。
 
 大切なのは、そのお金を「生き金」としてどこに使うかで、その人の
センスが問われることです。単に大金を持っているだけでは守銭奴と
笑われるだけです。

 お金をいかに早く稼ぐかが大事なのではなく、そのお金をどう使えるのか
が本質なのです。

  2009年11月27日   岡崎 太郎